託宣が下りました。

 ふいに場違いなほどにのんびりとした声が、断ち切りました。

 姫様は不機嫌に背後をにらみました。

「何なのアルベルト。何が言いたいの」

 そこにいたのは、勇者像に花輪を添えていた老兵。

「……?」

 彼の姿が、かすかにわたくしの記憶を揺り動かします。しかし、もやもやとした影ははっきりとした形になってくれません。

 アルベルトと呼ばれた老人は――老人といっても大層かくしゃくとした人物でしたが――姫君の横までやってくると、

「この女性には、姫と戦う権利があるのですよ。そうですな、アルテナ・リリーフォンス様?」
「――!?」

 わたくしは声にならない悲鳴を上げました。誰、この人はいったい――!

 一歩退いたわたくしのそばで、「おやおや」とアレクサンドル様が眉をつり上げました。

「よくお分かりですなアルベルト・シーラッハ殿。アルテナさんと面識がおありでしたか」
「はは、忘れていてくださったほうが嬉しいのだが。いつぞやはスライムをけしかけて申し訳なかった」

 丁重に頭を下げたその姿に、何かが重なりました。声が、耳の奥でひとつの言葉となって反響します。

『あまり簡単に人を信用してはいかんよ』

「あっ――」

 思い出した。足がさらに一歩退きました。

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