託宣が下りました。

 スライムに襲われたあの日――酔って倒れていた老人。
 わたくしに魔物の好む匂いをまとわせた張本人。
 わたくしの顔を間近で見た人。わたくしの声を知っている人――。

「覚えておられましたか。ひどい人間だと思っておられましょう」

 アルベルト老は沈痛に眉尻を下げました。改めて見ても、あまり兵服が似合うとも思えない、本当に好々爺然とした人物です。

 けれど、彼は姫君の従者。わたくしの命をも狙った人……

「アルテナ・リリーフォンス……ですって」

 姫が瞠目(どうもく)していました。まじまじとわたくしを見――「だって、顔が」うろたえた声がこぼれ落ちます。

 アルベルト老が愉快そうに肩を揺らして笑いました。

「女性というのは化粧ひとつで大変身するものですな。いやはや驚きです」

 お気持ちお察し致します――胸に手を当て、簡略な敬礼の仕草をして。

「……今のあなたのお立場。こうしてあっさりと明かしてしまったことも深謝したく思う」
「詫びれば済む話ではありませんな、アルベルト殿。彼女や友人たちの努力が台無しだ」
「分かっておる。しかし私は姫の側近ゆえ、姫に恥はかかせられぬ」

 アルベルト老はちらりと馬上の主人を見上げました。

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