託宣が下りました。

「あの暗殺者、さっさと殺してしまいなさいな。今はディアンが拘束していたしら? ディアンに命じなさい」

 声にならない悲鳴が、わたくしの喉からほとばしりました。
 アルベルト老の顔に疲労がにじみました。

「姫。しかしまだ調べることが――」
「調べたところで結果は同じよ、そうでしょう? 城に忍び入った時点であの女の処遇は決まっているのよ」

 やめて。やめて――。

 取引を拒絶したのは自分だと言うのに、狼狽(ろうばい)するしかなかった。ああやっぱり、ただの考えなしだった? 姫に蔑まれても当然の。

 話をうまく繋ぐことができたなら――もっといい道があったかもしれないのに。

「――やめて!」

 耳をふさいで叫びました。
 嘲弄(ちょうろう)の視線が、わたくしにまとわりついていました。

「いい気味ね。身の程をわきまえなさい、平民」

 ふふと艶然(えんぜん)とした微笑みを残して、姫君は手綱を引きました。

「さてと。アレクサンドル、すっかり忘れるところだったわ、民の不安を解消する方法を教えなさい」

 その瞬間にはもう、わたくしは姫君の世界から消えてしまった。抗おうにも、もはや声が届かない――。

 代わりに姫の注目を浴びた騎士のお父上は、ちらりとわたくしを横目で見て。

「残念ながら、姫。今回ばかりはあなたの思うようにはなりませんでしょう」

< 338 / 485 >

この作品をシェア

pagetop