託宣が下りました。

 姫君が柳眉(りゅうび)を寄せました。
 お父上は決して揺らがぬ表情で、静かに言を継ぎます。

「この世の全ての人間にはそれぞれの思惑がございます。それ次第では……姫の命でも、成されぬこともある」
「何の話」

 いらいらとした声が馬上から突き刺すように落ちても、お父上は平然としていました。

「なに、姫もそろそろ世間を知った方がよろしいというお話です。いや、世間というよりはむしろご家族をか――」
「だから、いったい何の話をしているの!」
「――ついでにもう一人、今回のことについては黙っておられぬ者がおります。ほら、やってきましたぞ」

 どこからか――
 馬の駆ける音が、聞こえてきました。

 広場で肩を寄せ合っていた民衆が、ひとつの方向を見て歓声を上げました。

 “見ろ、英雄だ”――

(英雄?)

 わたくしは顔を上げ、あっと声上げました。

「まあ、いいタイミング。たまには役に立つのね、リリ」
「本当に。たまにいいところを見せるのがきっとコツなのよ、ミミ」

 栗毛の馬を操りまっすぐ広場へとやってくる姿。白日の下、彼の金色の髪は神秘的なほど美しく輝いていて――
 
「騎士!」

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