託宣が下りました。

 豚牛羊の山から始まり、翌日には鶏の山がやってきて(わざわざ夜に!)、ある日はどこから集めたのか大道芸人たちをこのお屋敷の前で騒がせ、別の日には楽団を遣わして楽器を演奏させ――

 元より隣家がかなり離れているこのお屋敷とは言え、さすがに近所迷惑。わたくしは騎士の代わりにご近所へお詫び回りに行くはめになりました。

 ……恥ずかしかったのは、ご近所さんにもすでに「奥様」と認知されてしまっていることでしたが。

 おかげで夜もあまり眠れていません。このところ寝不足なので、騎士はわたくしに昼寝をするように言いました。
 ときどき、添い寝もしてくれます。
 ……手を出すことはありません。わたくしが疲れていると思ってのことでしょう。

 一日、一日と、彼の優しさを知っていきます。彼を拒絶していたころが嘘のように、わたくしは彼の胸にすり寄って眠るのです。

 そうして、王女の妨害に耐えながら、わたくしはその日への覚悟を着実に備えていきました。
 仮の結婚の儀が済めば、今度こそ――わたくしは彼のものになる。



 今日はとうとうラケシスと面会の許可が下りた日です。あの事件から二週間、ラケシスはいまだ王城に留め置かれていて、外出も許されていないと聞きます。
 そう言った情報は主にカイ様が教えてくれていました。
 そしてラケシスとの面会の許可を取り付けてくれたのもまた、カイ様でした。

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