託宣が下りました。

「本当は軟禁しているほうがおかしいんですよ。本当に王妃様と王太子様には困ったものです」

 迎えに来てくれたカイ様が、早々にぼやきました。
 わたくしは首をかしげました。王妃様が問題なのは薄々分かっていましたが――

「王太子様も、ですか?」
「殿下はラケシス様にベタ惚れなんです。一日も離れていたくないとかで、今の状況を喜んでさえいます」
「………」

 聞けば聞くほど信じられない。王子とラケシスが恋仲だなんて。
 王子のほうはもう、耳にタコができそうなほど聞きましたが、ラケシスのほうはどう思っているのでしょう?

(今日こそ問い詰めなければ)

 わたくしは決意を新たにし、カイ様の用意してくれた馬車に乗りこみました。



 豪華な四頭立ての馬車はゆっくりと前に進んでゆきます。

「そう言えばおねえさん。最近ヨーハンさんとどこかで会いませんでしたか?」

 道中、ふとカイ様がそんなことを仰いました。

「ヨーハン様ですか……? いえ、会っていません」

 かつてわたくしに魔物の講義をしてくれたヨーハン様。思えばお名前を聞くのも久しぶりです。お元気でいるのでしょうか。
 カイ様は腕を組んで首をかしげ、

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