託宣が下りました。
「いったいどうしてそんなことに? 以前はあんなに王太子様に怒っていたじゃないの」
「……うちの町に殿下が滞在していたころ……殿下から『剣の稽古をつけてくれ』と言われたんだ。剣を軽く見られるのが嫌だったから徹底的に叩きのめしてやった。そしたら……めげずに何度も私のところへ稽古に来て、サンミリオンの視察が終わってからもわざわざ王都から何度も来て、それを繰り返して、それで……」
……ということは。
「あなた、あのとき嘘をついていたのね? 王太子様のことを嫌うようなふりして――」
「ち、違うよ。あのころ呆れ果ててたのは本当なんだ。意見がはっきりしないのは変わらないし、軟弱なのも変わらないし、魔物を恐がるし、本当に本当に困ったやつだったんだ」
――でも。
そう思う一方で、生まれていた別の感情があった……と、つまりはそういうことなのでしょうか。
ラケシスは指をいじいじといじります。それはラケシスには珍しい、女の子らしいしぐさでした。
わたくしは、ゆっくりと尋ねました。
「じゃあ、今回王太子様がラケシスとの結婚を堂々と宣言してくれたこと……嬉しかったのね?」
「―――」
こくん。
無言で、首だけ小さく。
耳まで真っ赤になりながら――。