託宣が下りました。

 ラケシスは急に真顔になりました。
 わたくしと同じ色の瞳を、まっすぐにわたくしに向けて。

「殿下が『ついてこい』というなら、私はついていきたいと思った。……王妃の器だと思うわけじゃないけど、あの殿下が何かを強く望んでくれることなんて……本当に珍しいんだ」

 正直なところ――

 王太子殿下は無責任だと、わたくしは思っています。町長の娘とは言え、一般人である娘をいきなり将来の王妃にしようとするだなんて。

 ラケシスにばかり負担が来るでしょう。礼儀作法、勉学、周囲の目――あらゆることがラケシスに待っています。
 その厳しさを理解できていないような殿下なのだと、話を聞く限り、そんな危うさがあります。

 でも。

「……ラケシス。あなたは昔から、やると言ったことは必ずやり遂げてきたわね」
 わたくしは微笑みました。「王妃になる勉強も……やってみせるつもりなのね」

 今度は強く、うなずきが返りました。

「殿下は外国語に堪能なんだ。私にも教えてくれた。熱心に」

 ラケシスの声に熱がこもります。

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