託宣が下りました。

 いえ、騎士の言いたいことは分かるのです。仮の儀の準備を進めていることをエリシャヴェーラ様は当然ご存じでしょうし、お元気ならばきっとこの先も全力で邪魔をしてくるのでしょう。
 儀式が延び延びになれば、いずれ騎士も諦めて出立を優先することになるかもしれません。

 ご病気ならばその間に。頭では分かるのですが――

「実は今日ヒューイの機嫌は最悪だった。何でも王宮から脅しが入ったらしい」

 え、とわたくしは顔を上げました。

「婚儀の準備をやめなければ、店を潰すと言われたそうだ。まったく、王宮は相変わらず姫に甘い」
「そ、それでヒューイ様は」
「逆にやる気になったようだ。あいつはひねくれているからな、人の嫌がることをやるのが大好きなんだ。だから姫の嫌がる婚儀を絶対成立させてやると」

 ……そんな理屈ありですか。

 わたくしは思わず苦笑しました。ヒューイ様とはドレスの採寸のときに一度お会いしましたが、そのときはひたすら無言で会話どころではありませんでした。それなのに、今はだんだん親しみが湧いてきています。

「礼服もドレスも即行で作ってやると言われたぞ。予定より早く婚儀ができるかもしれん」
 騎士の声は、こころなしか弾んでいました。「修道長も立会人の約束を快諾してくれたし、あとは衣装ができるのを待つだけだな」

 姫のいない今がチャンスだ――と彼は繰り返し言いました。

< 384 / 485 >

この作品をシェア

pagetop