託宣が下りました。

 シェーラの手足の黒ずみは、だんだん範囲を広げているように思えました。このまま胸に広がり、やがて顔まで達するのでしょうか。そう思うとぞっと心の臓が震えました。

(ああ、どうして)

 昏睡する親友をなすすべもなく見つめながら、わたくしは必死で神に祈りました。

(どうしてなのですか。どうしてこんなことが……どうか、救いの手を)

 そして脳裏に一人の人物の顔を思い浮かべました。ヨーハン・グリッツェン様――私の知る限り最高の魔物学の学者さん。

(ヨーハン様がいれば、この事態の原因も分かるのかしら)

 今日もシェーラに何もしてあげることができないまま、とぼとぼと修道院から帰途につきました。
 騎士に、移動には馬車を使うように言われています。ですがその日は何となく馬車に乗る気になれず、一人歩いてお屋敷への方角へと向かいました。歩けば相当な距離があるのは分かっていますが――

「アルテナ様」

 呼びかけられたのは、まさにそのとき。

 わたくしはゆるゆると鈍い反応で振り向きました。
 そして――目を見開きました。

「ヨーハン様!」
「あはは~お久しぶりです~。お元気でしたかアルテナ様」

 ヨーハン・グリッツェン様。まさにその人が、以前と同じようにへらっとした笑顔でそこにいました。

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