託宣が下りました。

 ああ、何と言うことなのか。そのときわたくしはたしかに、騎士ヴァイスの首をしめようとしたのです。
 異常なまでに熱くなった両手で、

「――!!」

 騎士はわたくしを突き飛ばしました。それは攻撃に対する反射的な行動だったのでしょう。
 ベッドに倒れ伏す重い体。騎士が慌てて、「すまん! 大丈夫か」と身を案じます。

 わたくしは。
 重さをもろともせず再び起き上がり。
 ベッドのすぐそばにある窓へと向かいました。

 窓を押し開けば、冷たい冬の風。けれど今は熱いばかり。
 体が熱い、熱い、熱い、ああ――

 わたくしはおかしくなったのだと、頭の片隅、ほんの小さな部分がそれを察していました。

 騎士を愛したい。騎士に愛されたい。
 けれど愛が嘘ならば騎士を殺したい。ないまぜの思いが胸を焦がす。これはなに、これはなに――

 ――彼を試してみよう。胸の奥、邪悪な響きの声がとどろきました。

「アルテナ!」

 彼の呼ぶ声を最後に、わたくしは、
 二階の窓から、思い切り飛び降りたのです――



「待て! 行くな、アルテナ!」

 二階を飛び降りるなど、異常に身体能力の発達した騎士にとっても朝飯前のこと。
 彼はすぐに追ってきました。外套を着ることもないまま。

 けれどわたくしは逃げました。全力で逃げました。

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