託宣が下りました。
ああ、何と言うことなのか。そのときわたくしはたしかに、騎士ヴァイスの首をしめようとしたのです。
異常なまでに熱くなった両手で、
「――!!」
騎士はわたくしを突き飛ばしました。それは攻撃に対する反射的な行動だったのでしょう。
ベッドに倒れ伏す重い体。騎士が慌てて、「すまん! 大丈夫か」と身を案じます。
わたくしは。
重さをもろともせず再び起き上がり。
ベッドのすぐそばにある窓へと向かいました。
窓を押し開けば、冷たい冬の風。けれど今は熱いばかり。
体が熱い、熱い、熱い、ああ――
わたくしはおかしくなったのだと、頭の片隅、ほんの小さな部分がそれを察していました。
騎士を愛したい。騎士に愛されたい。
けれど愛が嘘ならば騎士を殺したい。ないまぜの思いが胸を焦がす。これはなに、これはなに――
――彼を試してみよう。胸の奥、邪悪な響きの声がとどろきました。
「アルテナ!」
彼の呼ぶ声を最後に、わたくしは、
二階の窓から、思い切り飛び降りたのです――
*
「待て! 行くな、アルテナ!」
二階を飛び降りるなど、異常に身体能力の発達した騎士にとっても朝飯前のこと。
彼はすぐに追ってきました。外套を着ることもないまま。
けれどわたくしは逃げました。全力で逃げました。