託宣が下りました。
ふしぎなことに、運動不足ですぐに疲れるはずのわたくしの足は、羽が生えたように軽やかに前に進みました。
二階から飛び降りても平気で着地できたことといい。体に、たしかに変化が起こっている。
全身が石のように重かったはずなのに、それがなじんできているのです。重いのに軽い。重いのが当たり前と思えるようになれば、体はいつものように動く。
いえ、いつも以上に動く。足が軽い。重いはずなのによく動く。軽い。
騎士は同じ速度で走っているようでした。近くもならなければ、遠くもならない。
――遠くならないように、わたくしのほうが加減している?
ふふ、と唇から笑みがこぼれました。
何と楽しいことでしょう。彼が追いかけてくる。わたくしを求めて追いかけてくる。
このまま掴まらなければ――彼はどうするの?
知りたくてたまらなかった。彼はわたくしを愛してくれている? 愛してくれているなら――
これからすることにも、ついてきてくれるのかしら?
「ヴァイス! アルテナ!」
「おねえさん……!」
横から別の声が聞こえてきます。見知った声のような気もしますが、今のわたくしにはどうでもよい声でした。
わたくしがほしいのはただ、彼の声だけ。
「アルテナ! どこへ行くんだ……!」