託宣が下りました。
ほら、彼が呼んでくれている。わたくしは笑みを浮かべたまま走る。追いつかれないぎりぎりの距離を保ったまま。
道を右へ左へ。遊ぶように移動しながら、わたくしは進みました。
「まてアルテナ! そっちは……!」
彼の焦る声が聞こえます。それはそうでしょう、これから向かう場所は。
切り立った崖――
彼はどうするのでしょう? わたくしは楽しくて仕方がありませんでした。ああ、愛をたしかかめるとはこういうことなのね。初めて分かった気がします。
「行くな! アルテナ!」
何度も何度も彼はわたくしを呼びました。
わたくしは少し速度を遅めました。彼が追いつけるようにと。
そうして――
崖の縁までたどりつき、後ろを振り返ります。
そこに騎士がいました。なぜか、もう二人増えていました。アレス様とカイ様だと、わたくしはようやく認識しました。頭の片隅で何かが大声を上げていましたが、わたくしは無視しました。
「おねえさん! あなたはまさか――!」
叫ぶのはカイ様。小さな体でよくついてきてくれたことです。それも魔術なのでしょうか。
「アルテナ!」
けれどわたくしに必要なのはたった一人。柔らかい金の髪に、夕焼け色の瞳をした人。
「そのまま動くな、動くと落ちる……!」