託宣が下りました。

 許して。わたくしは理性をなくして、ただのけだものの女に成り下がった――

 ――魔物に取り憑かれた者は欲に忠実になるのだと。
 そう教えてくれたのは誰だったか――

 いえ、今はそんなことはどうでもよいのです。わたくしは……

 わたくしは。

 ごぼごぼと体の中の空気が奪われていきます。苦しい。このまま死ぬのでしょうか?

 いえ。わたくしの体の中でうごめくものはまだ生きている。おそらくわたくしは――わたくしの体を借りた何かは生き延びる。

 そうして、再び騎士にすがるのでしょうか。娼婦のように。そして思いが叶わなければ牙をむく。彼を傷つけることをいとわずに。

 それがわたくしの望みなのかどうか、それはもう分からない。ただひとつだけ思うのは、

 この体を自由にするのを、許してはならない――

(わたくしは生き延びられる?)

 息はすでに止まっている。けれど苦しさがおさまった。わたくしは人ではないものになりつつある。

 体の中で始まっている、別の存在の胎動。

 ――自由にはさせない。決して。

 いつだったか教わった。魔物に勝つ最大の方法は、

 生への執着。――()()――

 それは憑依型の魔物でも同じはず。そう、諦めてはいけない。決して諦めてはいけない。

 ああ、ヴァイス様――

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