託宣が下りました。
 ただちにシェーラの捜索隊が出されました。

 中には、シェーラが自分で出て行ったのでは、と言う人もおりました。もちろんその可能性もなくはないのです。

 ですがわたくしには、とても信じられませんでした。シェーラはここ数日、わたくしの悩みを親身になって聞いてくれていました。『私がアルテナを守るからね!』と力強く請け負ってくれた彼女が……何も言わずわたくしのそばからいなくなってしまうとは、どうしても思えなかったのです。

 胸にもやもやとした暗雲を抱えながら、わたくしは捜索隊の結果を待ちました。

 勇者アレス様とカイ様が、心配して様子を見に来てくれました。騎士には『絶対来るな』と厳命したそうで……ふしぎなことですが、騎士はそれを忠実に守っているようです。

 祈りの間でシェーラの無事を祈ること二日――

 シェーラは、わたくしの思いもよらない場所で見つかりました。
 つまり、彼女の実家――王都郊外にある、ブルックリン家の別荘――で。



「ブルックリン伯爵から正式に書状が来たそうです。『娘は連れ帰らせてもらった』と」

 わたくしはアレス様とカイ様を前にして、消沈した声でそう説明しました。

「アンナ様は抗議してくださいました。でも……元々伯爵は、シェーラが修道院に入るのに反対の人だったようで。シェーラはほとんど家出同然に修道院に来たのです。……逆に伯爵から抗議し返されました。『さらったのはそちらだろう』と」

 シェーラは一人っ子なんです――
 わたくしがぽつりとそう言うと、アレス様は「うーん」とうなりました。

「それはまずいですね。今のご時世貴族でお子さんがひとりきりというのは珍しい話ですが……」
「お、奥様が早くに亡くなられたんですよ。とても美しい奥様で、伯爵は後妻をめとりませんでした」

 と、そう補足してくれたのは、貴族にも詳しいカイ様でした。「それだけに、一人娘のシェーラさんに対する愛情がなみなみならぬもの……なんです」
「なるほど。困りましたね」

 アレス様は腕を組み、真剣な顔で悩んでくれています。

 ここは修道院の近くにある屋台。朝早くにわたくしを訪ねてくれたアレス様とカイ様に誘われたのです。
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