託宣が下りました。

 わたくしにとっても、星空は無条件で嬉しい景色です。何だかすべてがうまくいきそうな、そんな予感を思わせる幸運の印です。

 けれどもいざ夜陰にそびえたつヴェルジュ山の前に立てば、その威容はあまりに圧倒的で、気を抜けば足が震えだしそうでした。

 星々はあくまで山を抱くように輝いていました。それはまるで、神聖な場所へ土足で分け入ろうとする者たちを、拒絶しているようにも見えました。

 わたくしは必死に心の中で自分を鼓舞しました。負けてはいけない。なにも、山と戦うわけではない。星の女神よ、苦しむ人々のためにどうか今しばらくお許しくださいと、まるで呼吸のように何度も何度も唱えながら。

「アルテナ様。こちらですよ」

 ヨーハン様の案内で、カイ様を含めて三人、ヴェルジュ山のふもとに開いた小さな洞窟の入り口をくぐります。

 中は暗かったため、ヨーハン様の松明とカイ様の魔術、二つの方法で明るくしました。どちらか一方が何かの拍子に消えてしまったときの用心です。

 おそらく鍾乳洞なのでしょう。つららのように白い石が、天井のあちこちからわたくしたちの通り道をふさいでいます。

 中は冷え切って寒く、カイ様が魔術で暖かい光も生みだしてくださいました。魔術って万能なのですね。改めてカイ様のすごさを思います。
 ただしわたくしがそういったことを口に出して称えてみても、なぜかカイ様は嬉しそうなような悲しそうなような、何とも微妙な顔をするのですが……。

「奥へ行けば広くなりますから~」

 先頭を行くヨーハン様が、松明を手にそんなことを言いました。
 声が、間延びしたものになっています。いつものヨーハン様の調子に戻ったみたいです。

「入ったことがあるのですか?」
「ええ。魔物学の研究にはここは欠かせませんし」
「魔物学に……?」

 バサバサッ
 何かのはばたきが聞こえ、わたくしがはっと頭上を見たとき、

「伏せて!」

 カイ様が空間に魔法陣を展開しました。青く輝く光、神秘的な古代文字――

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