託宣が下りました。

 カイ様は唇を噛んでいるようです。
 彼の優しさが身に沁みます。そうです、私のまわりにいる人々は誰も彼もが優しい。私が命を賭けることをよしとしない。

 だから。だからこそ。
 ……今は、譲れない。

「あ、服は脱いでください~。全裸でなくては、神は降りてこないそうです~」

 ってヨーハン様! 呑気に言ってますがそれって重大事項ですよ!

 ただ、幸い呑み込むことはできました。魔物に憑かれていたとき、禊ぎの間に入る前に服を脱いだのは自分の意思でした。そもそも禊ぎの間を使うときはそうするものだと、修道院で教えられておりますから。

「あ、あんまりこちらを見ないでくださいねっ」

 わたくしはヨーハン様とカイ様に何度も言って、二人に背を向けました。

「あはは。こんなこと知られたらヴァイス様にいよいよ殺されちゃいますねえ僕ら」

 ヨーハン様がとぼけ、なぜかカイ様が真っ赤になって「僕は絶対見ませんから!」と後ろを向いてくれました。

 わたくしは手早く旅装を脱ぎました。着慣れない服だけに脱ぐのにも手間取ってしまいましたが、ひとつひとつを進めるにつれ、心が澄んでいくようでした。

 最後の一枚を脱ぐのにはさすがに勇気が要りました。
 これで「下着は別にいいんですよ?」などと言われたらわたくしは憤死しそうですが、修道院の禊ぎの間では全裸が通常ですから、ここも同じはずです。そう信じます。

 そうして――わたくしは湖の縁に腰かけ、ゆっくり足を差し入れました。

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