託宣が下りました。

「神よ、どうかお力をお貸しください。今国では苦しんでいる者がいるのです。わたくしはその人たちを救いたい」

 どうなっても構わないから、どうかこの体をお使いください。
 すると神はため息をつくように息を吐き、

『せっかく助けられた体をすぐに捨てると言うか。自己犠牲は美しいが、それは無責任とは言わないのか』
「―――」
『そも、そなたはなぜそうして人を救おうとする? 自分さえ生き延びられればそれでよい。人とはそういうもの』
「いいえ!」

 わたくしは即座に応答しました。大きく首を振って。

「自分さえよければよい者のほうがこの世には少ない。誰しもなくせば悲しい相手がおります。愛しい人がおります」
『それはそなたの理想であろう。自分の生のみを望む者を、他人を見捨てる者を、我は何度も見てきた』
「―――」

 喉が嫌な音を立てるのを感じました。
 相手は――わたくしよりはるかに世界のことを知っている人。本来ならば言葉さえ交わす資格などなく、ただただ平伏(ひれふ)すしかない存在。

 それでも……わたくしのこの内に、告げなければならないたしかな思いがある。

「……おっしゃる通り、これはわたくしの願望なのかもしれません。たとえ、あなたのおっしゃることが世界の真理であったとしても」

 わたくしは――

「人が苦しむ姿を、『わたくしが』見たくないのです。神よ、わたくしは利己的なのです」
『………』

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