託宣が下りました。
 傍らでシェーラやレイリアさんがぽかんとこちらを見つめています。彼女たちの驚きを思うと、思わずくすりと笑いが漏れました。

「何がおかしいのさ姉さん?」
「いいえ。ラケシス、また背が伸びた?」

 問うと、妹は困ったように頭に手をやりました。

「おかげさまで。また2cm伸びたよ――180超えた」
「伸びるわね、ほんとに」
「私としては願ったり叶ったりだけどさ」

 ラケシスは楽しげに笑います。「聞いてよ、ハンターランクがAに上がったんだ。がんばったよ」

「本当に!? そんなことはこの間の手紙に書いてなかったのに」
「直接言って驚かせようと思って! 姉さんの驚く顔はかわいいからね」
「……! 何を言ってるのよ、もう」
「あははっ」

 そんなことを話しながら彼女が触れたのは、腰にある剣――。

 たぶん無意識に剣に触れるくせがあるこの妹は、正式に登録している討伐者(ハンター)です。

 幼いころから、戦うことに興味がある女の子でした。わたくしとはひとつ違いですので本当に同じように育てられたのですが、妹のほうはいつの間にか棒きれを持って振り回すようになっていました。

 ハンター登録をしたのは十六歳のとき。父と母の反対を押し切っての登録です。

 それ以来日がな一日魔物を追い回している娘を、両親はどれほど心配しているか知れません。わたくしだって、もちろん心配です。

 ですが――まるで周囲の心配を丸ごと否定していくかのように妹はひたすら背が伸び、筋肉がつき、腕力もとても女性のものではなく、運動神経も抜群で、髪を短く切りそろえているため外見も凜々しい男性といった風情になってきました。正直、そこら辺の男性よりかっこいいのです。

 ハンターになるために生まれてきた。そう言われても否定できないような雰囲気を身につけた妹。姉として色んな意味で心配なような、本人がいいならそれでいいような……。

 風がラケシスの髪をさらさらと揺らします。同じ色の髪なのに、彼女の髪はよく映えるのは何故なんでしょう?
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