託宣が下りました。
「――なるほど! 巫女の妹君か!」
ようやく悟った騎士が、驚きの声を上げました。そして、
「そうか。会いたかったんだ、巫女のご家族には――。よろしく頼む」
なんと殊勝なことに、彼は頭を下げました。
こっそりラケシスの腕の横から覗いていたわたくしは息を呑みました。彼にもこんな常識があったのですね!
「それにしても似てない姉妹だな? 腹違いか何かか?」
……直後に何を言い出すんですかこの人は。
ま、まあ実はそれを言われたのは初めてではありません。そのせいかさほど腹も立たず、ただ呆れて嘆息するばかりのわたくしをよそに、ラケシスはしばらく黙ったまま騎士を見つめて――。
やがて、低い声で言いました。
「……お断りします」
「は?」
そう間抜けな声を上げたのは誰だったのか。わたくしだったのか騎士だったのか、はたまたシェーラやレイリアさんを含めた全員だったのか。
代表したわけではないでしょうが、騎士が首をかしげて訊きました。
「お断り? どういうことだ?」
「どういうことも何もその通りです。あなたとのお付き合いはお断り申し上げます。これは私だけでなく、我が父、母の総意です」
ラケシスは半身を後ろに向け、わたくしをかばうように腕を回しました。
「あなたが姉にしてきた数々の暴挙、私は王都にいたのでよく知っています。本当はずっと姉を家に連れて帰りたかった。でも姉との約束があったからできなかった! それも今日でもうおしまいです」
わたくしとの約束――。
『どうか、何があってもわたくしには構わないで』
家を出る際に、家族とそう約束したのです。特にラケシスには強く言いつけました。ハンターという、どうしても血なまぐさい仕事である彼女が『修道女』に近づくのは、問題が多すぎましたから。
ラケシスはすぐに理解してくれました。そもそも修道女になりたいと言ったとき、父母と違い妹はまったく反対しなかったのです。「姉さんがやりたいなら」と優しくわたくしの味方をしてくれた妹。自分がハンターになったせいもあるのでしょうが、彼女は考えかたが柔軟でした。わたくしのほうがよほど頑固なほどです。
その妹が――。
まさかこんなことを言い出すなんて、本当に予想外で。
わたくしは、みっともなくも取り乱しました。
ようやく悟った騎士が、驚きの声を上げました。そして、
「そうか。会いたかったんだ、巫女のご家族には――。よろしく頼む」
なんと殊勝なことに、彼は頭を下げました。
こっそりラケシスの腕の横から覗いていたわたくしは息を呑みました。彼にもこんな常識があったのですね!
「それにしても似てない姉妹だな? 腹違いか何かか?」
……直後に何を言い出すんですかこの人は。
ま、まあ実はそれを言われたのは初めてではありません。そのせいかさほど腹も立たず、ただ呆れて嘆息するばかりのわたくしをよそに、ラケシスはしばらく黙ったまま騎士を見つめて――。
やがて、低い声で言いました。
「……お断りします」
「は?」
そう間抜けな声を上げたのは誰だったのか。わたくしだったのか騎士だったのか、はたまたシェーラやレイリアさんを含めた全員だったのか。
代表したわけではないでしょうが、騎士が首をかしげて訊きました。
「お断り? どういうことだ?」
「どういうことも何もその通りです。あなたとのお付き合いはお断り申し上げます。これは私だけでなく、我が父、母の総意です」
ラケシスは半身を後ろに向け、わたくしをかばうように腕を回しました。
「あなたが姉にしてきた数々の暴挙、私は王都にいたのでよく知っています。本当はずっと姉を家に連れて帰りたかった。でも姉との約束があったからできなかった! それも今日でもうおしまいです」
わたくしとの約束――。
『どうか、何があってもわたくしには構わないで』
家を出る際に、家族とそう約束したのです。特にラケシスには強く言いつけました。ハンターという、どうしても血なまぐさい仕事である彼女が『修道女』に近づくのは、問題が多すぎましたから。
ラケシスはすぐに理解してくれました。そもそも修道女になりたいと言ったとき、父母と違い妹はまったく反対しなかったのです。「姉さんがやりたいなら」と優しくわたくしの味方をしてくれた妹。自分がハンターになったせいもあるのでしょうが、彼女は考えかたが柔軟でした。わたくしのほうがよほど頑固なほどです。
その妹が――。
まさかこんなことを言い出すなんて、本当に予想外で。
わたくしは、みっともなくも取り乱しました。