託宣が下りました。
「いい加減にしてください騎士ヴァイス。迷惑です」

 ああ、胸騒ぎが鎮まっていく――。


 騎士と知り合ってから、もうじき三ヶ月になります。

 大半の日々顔を突きあわせてきた――。すでに日常になりつつある、彼の襲来。

 迷惑なのは、正直今でも変わりありません。

 それでも。

 いつもと変わらず軽口を叩き合えるということが、今のわたくしにはどれだけ救いとなることか。


(きっと来る。この人は)


 シェーラたちと別れを告げ、馬車に乗り込みながら、わたくしは最後まで騎士の視線を感じていました。

 故郷まで馬車で片道丸一日。それでも騎士は来るでしょう。そして父やラケシスたちを仰天させるのでしょうか。父や母らとも対立するのでしょうか?

 それは困ります。困りますが、
 何が起こっても騎士は騎士なのでしょう。そう考えると、少しだけ――楽しみな気がしてしまう。

 ……駄目ですね。こんな心根はとっくに修道女ではありません。

 やっぱりわたくしは芯から巫女の資格を失ってしまったのでしょうか。


 これから実家に戻って休養する中で、わたくしはいったい何を見つけるのか――。
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