一番好きなのは、キミだから
えっ、と……。
何が起きたの!? と思った次の瞬間。
あたしのすぐ脇を自転車が、スピードを落とすことなく通り過ぎて行った。
「あっぶねー。スピード落とせよ。ていうかここ、歩道なんだけど」
真宙くんが、通り過ぎて行った自転車のほうを睨みつける。
真宙くん……もしかして、あたしが自転車と接触しないように……?
「まっ、真宙くん……!」
「あ! ご、ごめん! 何も言わずに、急に抱き寄せてしまって。後ろから自転車が、すごいスピードで来てたから」
真宙くんが、あたしの腰にまわしていた手を慌てて離す。
「七星ちゃん、大丈夫だった?」
「う、うん。ありがとう」
あたしは、真宙くんに触れられていた腰にしばらく手を当てる。
抱き寄せられたとき……真宙くんの腕、とても逞しく感じたな。
あたしは、真宙くんの腕をチラッと見る。
暑いからか、制服のシャツの袖は肘まで捲られていて。
そこから見える筋肉質の腕に、思わずドキッとした。