【完】夢見るマリアージュ

「アレはないよね?」

「は…あ…」

とっくに私の存在に気づいていた北斗さんがゆっくりとこちらへやって来て苦笑する。

こんな至近距離で見つめたのは初めてだった。 しゃがみこみ口を開けたまま、彼の整えられた顔を見つめる。

勿論会話を交わした事は一度だってなかった。 今まさに話しかけられているのが自分かも定かではない。

「ああいうの苦手で……なんて返事返していいか分からず結局女の子を傷つけちゃうんだ。
自分の悪い所だって分かっているんだけど…」

「確かにアレはないかも。
いえ、ハッキリと告白を断るのはいいと思うんですけど、俺よりいい人が見つかると思うとか言われちゃったら
少し馬鹿にされてると思っちゃうかもしれないですし…」

「だよね…いっつも言った後に後悔しちゃうんだ。」

しょぼんとした顔で肩を落とす北斗さんを見て、更にハッとしてしまう。

私なんかが何を偉そうに彼に物を申しているというのだ。 人に告白もした事もされた事もないくせに。

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