【完】夢見るマリアージュ

膝を折り曲げた北斗さんはなおも苦笑いのままだったけれど、スッとこちらへ大きな手を差し伸べた。

それが自分に対してだと気が付くのに、随分と時間が掛かってしまった。  腕を掴み私を立ち上がらせると、北斗さんはふんわりと甘い笑顔を浮かべた。

苦笑いも甘い笑顔もどちらも不思議な魅力のある人だ。 くっきりと大きな瞳がこんなに優しく見えるなんて。 胸が高鳴って行く。

「ごめんね、気まずい現場を見せちゃって…。
居るって分かってたから早く済ませなくっちゃって思ってたんだけど…」

掴まれた腕は熱を帯びていて、胸の高鳴りが止まらない。 物静かで落ち着く声のトーン。
信じられないけれど、彼はこんな私を気遣い謝っているのだ。
周囲からはいつもキモイとかヤバいと言われるこんな私にまで優しいなんて。

「い…ぇ…。全然気にしないで下さい…寧ろあんな場に居合わせちゃうなんて…私の方こそタイミングが悪いっていうか…
ごめんなさい。」

「アハハ、何で君が謝るんだよ。」

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