【完】夢見るマリアージュ

「岸田さん、今日はありがとうございます。
それに一緒にご飯も食べれて嬉しいです」

だから素直にそう言ったら、口を曲げた岸田さんが変な顔をした。

「あなたの奢りじゃない。お礼言うなんて変だわ」

「いえ、岸田さんは私と一緒にご飯を食べるなんて嫌なんじゃないかなーって思って…。
洋服売り場や化粧品売り場に居る時も思っていたのですが
私みたく冴えなくキモイ女と一緒に居ると…岸田さんの評価も下がるかなあって思ったら申し訳なくって…」

そう言うと、更に岸田さんは変な顔をする。ムッと眉間に皺を寄せると、鋭い眼光でこちらをジッと見つめる。

「何それ、評価が下がるとか馬鹿みたい」

「え?」

「馬鹿みたいって言っているの!自分を冴えないとかキモイとか言うなんて信じられない。
そうやって卑屈な考え方していると、北斗さんにも嫌われちゃうわよ…?!」

口調はきつかったけれど、岸田さんの事はちっとも怖くなくなっていた。 その言葉の裏の優しさが私には泣きたくなるほど嬉しいから。

卑屈、か。
確かに私は卑屈な性格だ。 今までそれは生まれ持った容姿のせいだと思っていたけれど、もしかしたらそうじゃなかったのかもしれない。

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