ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「で、ヴァルト。結論から聞くけど?」

 ひじ掛けで頬杖をつきながら、ハインリヒがジークヴァルトに問うた。

「ダーミッシュ嬢は、全く力を使えていない。力に蓋をされ、守護者との調和もはかれていないようだ」

 ハインリヒ王子は驚いたように顔を上げた。ジークヴァルトの婚約者は、ラウエンシュタイン公爵家の正統な血筋であると聞いていた。そのようなことがあり得るというのか。

 ハインリヒは、目を大きく見開いたままリーゼロッテに視線を移し、それからジークヴァルトに顔を戻すと、盛大に眉間にしわを寄せた。

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