ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ジークヴァルト、お前は今まで何をしていたんだ?」
「ダーミッシュ嬢が十五になるまで、接触を禁じられていた。ラウエンシュタイン家の意向だ」

 ハインリヒの問いにジークヴァルトは無表情で答えた。

 ラウエンシュタインとは、リーゼロッテの生家だ。公爵家だとリーゼロッテは教えられている。養父母であるダーミッシュ伯爵夫妻は、リーゼロッテに本当の両親のことを包み隠さず伝えていた。

 ジークヴァルトとて、何もしてこなかったわけではなかった。()()()を刺激しない程度に、定期的に情報を仕入れ、贈り物のなどの形をとって守ってきたつもりだった。

 彼女はほとんど領地から出てこなかったし、ダーミッシュ領は犯罪も少なく平穏な土地だ。彼女もうまくやっているだろうと思っていたのだ。

「リーゼロッテ嬢、君はヴァルトとの婚約をどう聞いているの?」

 しばらく逡巡したのちに、ハインリヒ王子が口を開いた。

「義父からは王命であると」
「……そうか」

 ハインリヒは考え込んだ。

(彼女は龍の託宣について、何も知らされていないのか……?)

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