ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「我がブラオエルシュタイン王家は、はるか昔、龍とひとつの契約をかわした」

 ハインリヒは、リーゼロッテを真っ直ぐ見つめ、ゆっくりした口調で続けた。

「その契約に基づいて国は安泰を約束され、王家は龍から託宣を賜ることで王位を継ぎ、長きにわたり国を治めてきた」

(……予定調和、ということかしら?)

 ブラオエルシュタイン王国は、建国してから優に八百年はたつ。

「王位の継承は、龍の託宣によって決められる……ということでしょうか?」

 にわかには信じがたい話に、リーゼロッテはそう聞き返した。ハインリヒはゆっくりとうなずいて肯定を示す。

「王位を継ぐ者は託宣の通りに婚姻を結び、子をつくり、その子がまた託宣を受け、王となる。そのくり返しだ」

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