ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「……出過ぎたことを申し上げました」

 聞いてはいけないことだったのかもしれない。リーゼロッテはふるえる唇で、なんとか声を紡ぎだした。

「いや、いい……わたしのことは、いいのだ。今話すべきことではない」

 ハインリヒは何事もなかったようにすぐ表情をもどした。リーゼロッテにというより、自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

 場の雰囲気を変えるかのように、灰色の髪の少年が冷めた紅茶を下げ、新しい紅茶をリーゼロッテの前のテーブルへと差し出した。

「よろしければどうぞ」

 琥珀色の目を細めてリーゼロッテに笑みを残すと、少年はそのままテーブルの端をみやり、何かを目で追うように視線を彷徨わせた。

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