ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「……ああ、もしかしたら、周りにいる小鬼の波動に同調して、ヴァルトの力に恐怖を感じてしまっていたのかもしれないね」

 ハインリヒがそう言った横で、カイはいまだに腹を抱えて身をよじらせている。そんなカイをあきれたように一瞥してから、「お前はいい加減笑いすぎだ」とハインリヒはもう一度カイの頭を軽くはたき落とした。

「ときにリーゼロッテ嬢、今はどう思っているの? ……ヴァルトは怖い?」

 ハインリヒの問いに、リーゼロッテはきょとんとする。いまだジークヴァルトの腕の中にいたリーゼロッテは、上目遣いでジークヴァルトの青い瞳をじっとみつめた。

「ジークヴァルト様は、とっても綺麗です」

 ――それこそ、この守り石のように。

 リーゼロッテは答えになっているようでなってないような、そんな言葉を返す。無言で見つめ合っているふたりに、ハインリヒがわざとらしく咳ばらいをした。

「それ以上はふたりきりの時にやってくれ」

 意味不明なことを言われ、リーゼロッテは訝し気に小さく首をかしげた。

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