ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ああ、先ほどの茶会でリーゼロッテ嬢はすごい数の小鬼を背負っていたね。今まで日常生活に支障はなかったかい? 異形に取り憑かれると、いろいろと障りが起こるんだ。例えば、疲れやすいとか怪我をしやすいとか。あと、まわりでものがやたらと壊れたりとか……」

 ハインリヒの言葉にリーゼロッテは息を飲み、小さな唇を震わせた。思い当たることがありまくりだ。

「あの……では、わたくしが今まで……何もないところで毎日転ぶのも、体がずっと重いのも、物がよく壊れるのも、鏡がすべて割れるのも、いきなりカラスが窓から飛び込んでくるのも、フォークとナイフが天井に突き刺さるのも、みんなみんな異形のせいだというのですか……?」

 リーゼロッテの青ざめた顔は、今ではもう血の通わない人形のようだった。

「ええ? なんか想像以上だし!?」

 なんかいっぱい笑ってゴメン、とカイがばつが悪そうに言った。

 先ほどの小鬼たちが、わさわさと足にしがみついて自分を転ばせているところを想像したリーゼロッテは、真っ青になって身震いした。

(聞かなければよかった……)

 世の中には、知らない方が幸せなこともあるのだ。

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