ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「なぜ、わたくしにばかり寄ってくるのですか!?」

 屋敷でも被害にあっていたのは、明らかにリーゼロッテだけだった。そのことを言うと、ハインリヒ王子は「ああ」と言ってから、言葉を続けた。

「リーゼロッテ嬢はヴァルトの託宣の相手だからね。狙われるのはきっとそのせいだ。それにダーミッシュ伯爵家は、代々()()()()()が多い家系だから、なおさらリーゼロッテ嬢に集中したのだろう」
「無知なる者……?」
「ああ、無知なる者は、異形の者が見えず、感じない人間のことを言うんだよ。そして同時に異形の者も、無知なる者に干渉することはできない」

 少し小首をかしげたリーゼロッテを見て、ハインリヒはゆっくりと言葉を続けた。

「要は、異形の者になんら影響を受けない人間のことを無知なる者と呼ぶんだ。仮に奴らが襲ってきても、無知なる者なら巻き込まれることもない。だからこそ、リーゼロッテ嬢の養子縁組に、ダーミッシュ家が選ばれたんだよ」

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