ふたつ名の令嬢と龍の託宣
最後にパリンと何かが割れる音がしたが、リーゼロッテは、あれはわたしのせいじゃないと自分に言い聞かせて、何食わぬ顔で通りすぎていった。
あわてた衛兵が駆けよってくる。何ごとかと問われたので、「大きな猫があちらに走っていきました」とごまかすと、衛兵はあっさりと納得してくれた。言ってみるものである。
途中、何度かつまずきそうになったが、そのたびに足を止め、すり足でゆっくり進み、なんとか事なきを得た。ドレスの裾が長いせいで、その珍妙な足さばきは、誰の目にも止まることはなかった。
この歩き方は、幼少期に教わったマナー教師の夫人の指導の賜物である。厳しい人だったが、おかげでリーゼロッテが転ぶ回数は大幅に減ったのだ。
(ありがとう、ロッテンマイヤーさん)
夫人の名前が長ったらしくて覚えきれなかったリーゼロッテは、心の中で夫人をそんな名前で呼んでいた。ひっつめ髪に丸眼鏡の夫人はかなりの美人であったが、雰囲気がまんまアルプスの某少女の友人令嬢の教育係そのものだった。げに恐ろしい人だったが、今では感謝するばかりだ。
あわてた衛兵が駆けよってくる。何ごとかと問われたので、「大きな猫があちらに走っていきました」とごまかすと、衛兵はあっさりと納得してくれた。言ってみるものである。
途中、何度かつまずきそうになったが、そのたびに足を止め、すり足でゆっくり進み、なんとか事なきを得た。ドレスの裾が長いせいで、その珍妙な足さばきは、誰の目にも止まることはなかった。
この歩き方は、幼少期に教わったマナー教師の夫人の指導の賜物である。厳しい人だったが、おかげでリーゼロッテが転ぶ回数は大幅に減ったのだ。
(ありがとう、ロッテンマイヤーさん)
夫人の名前が長ったらしくて覚えきれなかったリーゼロッテは、心の中で夫人をそんな名前で呼んでいた。ひっつめ髪に丸眼鏡の夫人はかなりの美人であったが、雰囲気がまんまアルプスの某少女の友人令嬢の教育係そのものだった。げに恐ろしい人だったが、今では感謝するばかりだ。