ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 やがて、ドアが開く音がして、リーゼロッテは目的地にたどり着いたことを知り、安堵のため息をついた。ぽすんと椅子に降ろされる。見ると、昨日の応接室だった。

「あの、王子殿下とカイ様はいらっしゃらないのですか?」

 ジークヴァルトとふたりきりであることに気づき、リーゼロッテは聞いた。

「ふたりは公務だ」

 そう言って、ジークヴァルトは昨日と同じように、リーゼロッテを閉じ込めるように覆いかぶさった。ひとりがけのソファは逃げ場がなく、昨日のあの場面がよみがえる。

 いくら婚約者とはいえ、これはまずいのではないのだろうか。リーゼロッテの危惧におかまいなしに、ジークヴァルトは胸のペンダントに手を伸ばした。

「一晩で、随分くすんだな」

 石をつまみあげ、ひとりごちる。そのまま、石に口づけようとした。
 慌てたリーゼロッテが、その肩を両方の手でぐいと押す。昨日の二の舞になったら、いろんな意味でもたないと思ったのだ。

「あの、ジークヴァルト様っ」

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