ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 なんとなくしんみりした空気になっていることに気づき、ハインリヒは努めて明るい声で言った。

「何にせよ、まだ一週間だ。リーゼロッテ嬢は焦ることはない」

 あまり無理はしなくていい、とつけ加えると、ハインリヒはリーゼロッテにふわりと笑った。

「頑張らねばならないのは、むしろヴァルトの方だがな」

 ジークヴァルトには冷ややかにそう言い残すと、王子は懐中時計の蓋をぱちりと閉めて、カイを連れて応接室を去っていった。


「と、いうわけだ。いい加減、諦めてそこへ座れ」

 一人がけのソファを親指でくいとさすと、ジークヴァルトは魔王の笑みをリーゼロッテに向けた。テーブルの上で、先ほどの小さい小鬼が、不思議そうに首をかしげてそれを見守っていた。

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