ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ディートリヒ王に似て、綺麗な赤毛に金色の瞳をした愛らしい姫は、その日、刺繍の時間に飽きたのか、部屋を抜け出してしまったのだ。側にはたくさんの侍女や女官がいたが、その包囲網をかいくぐってこつぜんと姿を消してしまった。

 割とよくあることらしく、またかとばかりに捜索は淡々と進められていた。アンネマリーは来たばかりでお客様状態だったが、よくわからぬまま、王女殿下の捜索へと駆り出されていた。

 王城の内部に詳しくないアンネマリーは、なんとなく自分が子供の頃だったら隠れそうな場所を探してまわっていたのだが、思ったより奥の方まで入り込んでしまったことに気がついた。庭の茂みから出て、先に見えた小道に行先を変える。

(どうしよう……やみくもに歩いたから、どちらから来たのか分からなくなってしまったわ……)

 まわりを見渡すも、人影は見えない。衛兵の一人でも立っていそうだが、人っ子ひとり見当たらなかった。すると、奥の方から、がさがさと葉が揺れる音がした。

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