ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「ピッパ様……?」

 驚かせないようにそうっと近づくと、なんだか楽しそうな笑い声が聞こえてきた。しかし、それは少女のそれではなく、青年の、透き通った耳に心地いい笑い声だった。

「はは、殿下、くすぐったいぞ。ほら、顔をなめるのはやめろ」

 何やら不穏な台詞が聞こえてくる。

「ば、やめろってば。ようし、そんなやつは、こうしてやる」

 楽しそうなことこの上ない、それはそれは上機嫌な声だった。アンネマリーはいけないと思いつつも、音をたてないように近づき、茂みの陰からそうっと覗き見た。

「!?」

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