ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 リーゼロッテはウキウキしながら廊下を歩いていた。その後ろを無表情のジークヴァルトが続く。

 なるべく廊下の真ん中を歩き、左右の確認も怠らないようにする。異形の者たちは、遠巻きに見つめてくるが、それ以上は近寄ってこようとはしなかった。

(やった、この作戦ばっちりだわ!)

 すれ違う騎士たちには、軽く笑顔をつくり会釈をする。抱えられてなければ、恥ずかしいことは何もない。鼻歌のひとつでも歌いたい気分だ。

 いつも抱えられて移動していた廊下は、リーゼロッテの視点からはまた違った風景に見えた。異形たちも、ずっと同じいるところにいる者もいれば、ふらふら移動している者もいて、いろんなことが分かってくる。

(だってジークヴァルト様、速足なんだもの)

 揺れるわ恥ずかしいわで、周りを冷静に観察する余裕もなかった。

(でも、あまりゆっくり歩いていると、また運ばれてしまうかも)

 そう思ったリーゼロッテは、気持ち速足で進むことにした。

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