ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 すると遠くから、かしょん、かしょん、かしょん、と音が聞こえてきた。どうやらその音は近づいてきているようだ。

 廊下の分かれ道の薄暗い先から、何か大きな影が見える。リーゼロッテはジークヴァルトの腕の中から、首をひねってそちらをみやった。

(く、首無しの鎧が歩いてる!!)

 リーゼロッテは無意識にジークヴァルトの首に強くしがみついた。

 かしょんかしょんと音とたてて、鎧はこちらに近づいてくる。よく見ると、その鎧は甲冑の兜をかぶったままの自分の首を小脇に抱えていた。

「じじじジークヴァルト様」

 リーゼロッテのその言葉に、ジークヴァルトが足を止める。

(いや! なんで止まるのっ!!)

 リーゼロッテはさらにぎゅううっとジークヴァルトにしがみついた。

 その間にも首無しの鎧はふたりにどんどん近づいてくる。リーゼロッテの反応を見て、「ああ」とジークヴァルトは無感情な声で言った。

「あれは三百年前の大公だ。時々、ああやって王城内を徘徊しているが、害はない」

 そう言うとジークヴァルトは、リーゼロッテをすとんと下に降ろした。首無し鎧はすぐそこまで迫っていた。

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