ふたつ名の令嬢と龍の託宣
(この鎧の大公様も異形なのね。魂の錬成、とかではないわよね、やっぱり……)

 リーゼロッテはここの所ずっと思っていた。せっかく異世界に転生したのだから、錬金術とか魔法陣とか、そっち系の世界がよかったのにと。なぜに自分はドロドロでデロデロなオカルト系なのだ。異世界要素は、それこそ龍の存在くらいだ。

(ラノベ的にタイトルをつけると、『異世界に転生しましたが、魔法は存在せずかわりに異形に狙われています』とか?)

 そんなことを考えて、かえってげんなりしてしまった。

(せめて『異世界の令嬢に生まれ変わりましたが、チートは微塵も発生しない模様です』とか? あ、これ、完全にパクりなやつ(あかんやつ)だわ)

 リーゼロッテが心を飛ばして現実逃避をはかっていると、鎧の大公は脇に抱えた兜のベンテールを反対の手でかしゃりと開けた。ベンテールを上げた兜から、金色の瞳が覗いている。

 鎧の大公はなかなかのイケおじだった。小脇に抱えられた生首でなければの話だが。

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