ふたつ名の令嬢と龍の託宣
◇
「いやー、なんか護衛騎士の間ですごい噂になってるね、リーゼロッテ嬢」
紅茶を淹れながら、カイが楽しげに言った。
「噂? 噂ってどんなですの?」
ぐったりしながらソファに沈みこんでいたリーゼロッテは、カイに聞き返した。
「鬼が妖精を連れているとか、悪魔が妖精をさらってきたとか、魔王が妖精をかどわかした、とか?」
「なぜすべて妖精なのでしょう!?」
リーゼロッテは信じられないといったふうに、頬に両手を当てて頭をふるふると振った。大きな緑の瞳をうるませて、羞恥に震えるリーゼロッテはとても庇護欲をそそる。
「あー、なんていうか、そういうところだろうねー」
自覚はないんだと、カイは苦笑した。
小さくて可愛くて可憐なリーゼロッテが、ジークヴァルトにふんわりと抱き上げられる様は、重さを感じさせない妖精そのものだった。騎士たちの中には、その背に羽がないかと真剣に探す者までいた。女に餓えた男どもにとって、リーゼロッテは奇跡のような存在となっていたのだ。
いかにジークヴァルトの婚約者と言っても、よからぬことを考える奴がいるかもしれない。リーゼロッテの無防備さが心配になってきたカイは、人差し指を立てて言い聞かせるように言った。
「リーゼロッテ嬢は、間違っても一人で王城内を出歩いたらダメだよ?」
「なぜ、みな同じことを言うのですか……」
「いやー、なんか護衛騎士の間ですごい噂になってるね、リーゼロッテ嬢」
紅茶を淹れながら、カイが楽しげに言った。
「噂? 噂ってどんなですの?」
ぐったりしながらソファに沈みこんでいたリーゼロッテは、カイに聞き返した。
「鬼が妖精を連れているとか、悪魔が妖精をさらってきたとか、魔王が妖精をかどわかした、とか?」
「なぜすべて妖精なのでしょう!?」
リーゼロッテは信じられないといったふうに、頬に両手を当てて頭をふるふると振った。大きな緑の瞳をうるませて、羞恥に震えるリーゼロッテはとても庇護欲をそそる。
「あー、なんていうか、そういうところだろうねー」
自覚はないんだと、カイは苦笑した。
小さくて可愛くて可憐なリーゼロッテが、ジークヴァルトにふんわりと抱き上げられる様は、重さを感じさせない妖精そのものだった。騎士たちの中には、その背に羽がないかと真剣に探す者までいた。女に餓えた男どもにとって、リーゼロッテは奇跡のような存在となっていたのだ。
いかにジークヴァルトの婚約者と言っても、よからぬことを考える奴がいるかもしれない。リーゼロッテの無防備さが心配になってきたカイは、人差し指を立てて言い聞かせるように言った。
「リーゼロッテ嬢は、間違っても一人で王城内を出歩いたらダメだよ?」
「なぜ、みな同じことを言うのですか……」