ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「リーゼロッテこそ、クリスタ叔母様は一緒ではないの?」
「あいにく義母は、出席していないの」
「そう、それは残念だわ。ぜひまたお会いしてお話がしたいわ」

 アンネマリーは、子供のころの面影を残したほがらかな笑顔を見せた。アンネマリーの屈託のない笑顔が大好きだったことを、リーゼロッテは思い出していた。

 小さい頃のことは記憶があいまいだが、アンネマリーは屋敷から出られないリーゼロッテの、唯一の友達と呼べる存在であった。アンネマリーたちが隣国へ旅立つときは、ひどく落ち込んで家族を心配させたように思う。

「あら、もう順番だわ。あとでまたゆっくり話しましょう」

 小声でそう言ってアンネマリーは、優雅な足取りで王妃の元へ向かっていった。そつなく、しかも今までの令嬢に比べて最短で挨拶を終えたアンネマリーは、さっさと円卓に移動していった。

 その背を見送った後、リーゼロッテは覚悟を決めて王妃の前に足をすすめた。

(どうか、おかしなフラグが立ちませんように……!)

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