ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「きゃ」

 小さな悲鳴を上げた次の瞬間には、リーゼロッテはジークヴァルトの膝の上にのせられていた。抗議の声を上げる間もなく、一度手渡されたペンダントを取り上げられ、ジークヴァルトはそれをサイドテーブルへとコトリと置いた。

「あの、ジークヴァルト様」

 言葉を紡ごうとした瞬間、背中を支えられ、そのままジークヴァルトが胸元に唇を寄せる。

「流れを見る。じっとしてろ」

 なぜこの男はいつもこうも唐突なのか。リーゼロッテはもうどうしたらいいのかわからなくなって、ジークヴァルトの騎士服を握りしめた。

 龍のあざが熱い。リーゼロッテはめまいを覚えた。体の内側で何かが渦巻き呼吸が荒くなる。

(な、に? いつもとちがう)

 体の内側から壊されそうな恐怖を覚える。

「ヴぁ、るとさま……」

 その声も口から紡げたのかどうかもあやしかった。

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