ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ハインリヒの言葉に、ジークヴァルトも頷いた。

「やってみる価値はあるが、ダーミッシュ嬢は力を感じる能力も弱い。焦るのは危険かもしれない」
「そうか……。しかし、今まで彼女はどうやって力を制御していたのだ? ヴァルトの話だと、その“力の目詰まり”とやらは日々悪化しているのだろう? 生まれてこの方、それがずっと続いていたとすると……今頃彼女の体はどうにかなっているはずだ」

 茶会で小鬼を背負った姿はある意味圧巻だったが、日常であの状態がずっと続いていたとしたら、リーゼロッテの命はすでになかっただろう。ため込んだ力の放出、異形の浄化など、必ずどこかでリセットが行われていたはずだ。

「とにかく、明日にでも彼女に確認するしかないな」

 ハインリヒはため息交じりに言った。もっと休ませてやりたいが、今は時間が惜しい。正直、ここまで手こずるとは思っていなかったのだ。

 ダーミッシュ家には、リーゼロッテの身柄の拘束は一カ月と期限をきってある。一度領地に帰すにしても、何らかの進展はしておきたかった。

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