ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 この国の王家はとても親しみやすく、仕える者にも悪どい人間はほとんどいなかった。アンネマリーは、王宮などは陰謀渦巻くドロドロとした世界で、決して近づくものではないと思っていたのだが。自国の王室はいたって平和な人間関係ばかりだった。

「それに、リーゼの言っていた通りね。ハインリヒ様にお会いしたのだけれど……とてもおやさしい方ね」

 頬を赤らめて、アンネマリーが恥ずかしそうに言った。

「まあ、王子殿下とお会いしたのね」

 アンネマリーが王妃の茶会でどうしてあれほど王子殿下を悪く言っていたのか、リーゼロッテは今でも不思議に思っていた。

「アンネマリーは、なぜ王子殿下のことを……あんなふうに誤解していたの……?」
「……わたくしの偏見がいけなかったの」

 アンネマリーは気まずそうに答えた。

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