ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ジークヴァルトの行動は、何の前触れもなく突拍子もないようなことばかりだ。はじめは、ただ単に、からかわれているのかと思ったが、冷静に考えると、それらの行動にはきちんと意味があったようにも思う。

 昨日の抱っこ輸送も、恥ずかしいからいやだと訴えたら、素直に降ろしてくれたではないか。結局はよくわからない理由で、再輸送されることになってしまったが、もしかしたら理不尽を強いる人ではないのかもしれない。

(ただ、口下手で、不器用な人なのかも?)

 そう思うと、少し苦手意識がなくなったように感じた。もう少し、ジークヴァルトとは会話をした方がいいのかもしれない。

(今日は一日会えないんだわ。……毎日会っていたから、なんだか変な感じ)

 明日になれば、また会える。そう思うのに、会えないとなると漠然と不安を感じた。

(吊り橋効果で、おかしくなってるのかしら……?)

 決してジークヴァルトが嫌いなわけではない。婚約者なのだから、好きになれればそれに越したことはないとも思う。

 しかし、リーゼロッテはこの感情に、名前をつけることはいまだできないでいた。

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