ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 最近、頭の痛いことが山積みだ。ハインリヒは、猫の殿下を膝にのせて、はぁと小さく息をついた。

 ここのところ、王城内で異形がらみの報告は日増しに増えている。その対応に追われつつ、書類仕事から何がしかの式典の出席まで、王太子として日々の公務もこなさなくてはならない。

 ディートリヒ王は、ハインリヒにまかせる仕事を年々増やしていた。それは、周りから見れば容赦ないペースだったが、期待されていると思えばできないと弱音を吐くこともできず、ハインリヒはここ数年、公務と自身の託宣の問題にかかりきりの毎日を過ごしていた。

 式典などでは、今まではジークヴァルトの威圧があったので大した心配もなかったが、カイが自分の護衛につくようになってから、ハインリヒはまるで心が休まらなかった。カイは常にあの調子なので、女性との距離が近いのだ。

 ああ見えてカイはけっこう手が早い。

 侯爵家の五男で継ぐ爵位もないため、結婚相手として若い令嬢たちには見向きもされていないのだが、既婚者や未亡人などのご婦人たちから人気が高いのだ。気軽に付き合えるいい遊び相手とみられているらしい。

 あの年で先が思いやられるとハインリヒは常々思っていた。

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