ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「お疲れのご様子ですね……きちんとお休みになられていますか?」

 のぞき込むように言うアンネマリーの亜麻色の髪が、彼女の肩からさらりとこぼれた。ふわりと甘い香りがする。

 こんな時、ハインリヒはどうしようもない焦燥感を覚えた。ふわふわで柔らかそうなその髪に思わず触れてみたくなる。あまつさえ、その髪に顔をうずめて匂いをかぎたいなどと思っている自分をどうしたらいいのだろうか。

 ふとした時間に気づけばアンネマリーのことばかりを考えている。彼女のことを考えると、胸がしめつけられるように苦しくなる。苦しいのに、会いたい。そして会ったら会ったで、触れたい衝動を抑えられなくなる。

 いまや猫の殿下はハインリヒのバリケードだ。できるだけ平静を装って、ハインリヒは口を開いた。

「問題ないよ。こうして殿下に癒しをもらっているし」

 ハインリヒが殿下のお腹をたふたふゆらすと、それに応えるように殿下が「ぶな」と鳴いた。

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