ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
「最近、ハインリヒはうまくやっているかしら?」
「ハインリヒ様、まじめだから、見てるこっちがもどかしくなりますよ」 

 イジドーラ王妃に問われたカイは投げやりにそう答え、そんなことより、と不満げな顔を王妃に向けた。

「ハインリヒ様とアンネマリー嬢の時間を合わせるのって、結構大変なんですよ? 衛兵とか人払いも面倒だし、ピッパ様のお相手も務めなきゃならないし」
「あら、それくらいやってあげてもいいじゃない」
「いや、アレを見せつけられたら、やってられなくなりますって」

 ハインリヒとアンネマリーは、会っている間、見つめあっていることが多い。多いというか、ほとんどの時間がそうだ。話している時もそうでない時も、お互いの視線が片時もお互いを離さないでいる。

 カイにしてみれば、じれったくて仕方がないのだが、ハインリヒの事情がそうさせているのだから如何ともし難い。自分だったらあの生殺しの状態は、絶対に耐えられないだろう。

「ねえ、イジドーラ様。ハインリヒ様がダメだった時、オレがアンネマリー嬢もらってもいい?」

 リーゼロッテも可愛いと思うが、どちらかというとからかって遊びたい対象だ。その点、アンネマリーの豊満な体はなかなか魅力的だった。

「あら、ダメよ。ハインリヒがかわいそうじゃない」
「……今の状況も十分カワイソウですよ、イジドーラ様」

 カイはあきれたようにイジドーラに返した。

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