ふたつ名の令嬢と龍の託宣
     ◇
 アンネマリーが王妃の離宮に戻っていった後、リーゼロッテは夕食の給仕に来た王城勤めの侍女たちに、ジークヴァルトのことを聞いてみた。

「あの、今日、アンネマリーに、ジークヴァルト様のお噂を聞いたのだけれど……あなた達は何か知っているかしら……?」
「まあ、リーゼロッテ様はご存じなかったのですか? 公爵様が毎夜、リーゼロッテ様のお部屋をお守りになっている話は、侍女の間では有名でございますよ」

 とても生暖かい目で見られてしまった。

「エラも知っていたの?」
「はい、お嬢様。わたしは朝かなり早い時間に部屋の外でお会いしたことがございます。公爵様からは、心配をかけるから言わないように申し付かっておりました。黙っていて申し訳ありません」

 エラがしゅんとして言った。

「そうだったの。大丈夫、怒っていないわ。言いつけにそむけるはずもないものね」

 リーゼロッテはこの“自分が守られてます感”が、むずがゆくてどうしようもなくいたたまれなく感じた。

(明日ヴァルト様に会ったら、やめてもらうように言ってみようかしら……)

 だが、ジークヴァルトが恥ずかしい、恥ずかしくないという基準で、物事を考えるような人物には思えなかった。必要だからやる。そこに余計な感情は存在しないように思えた。

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